「その一言が~」
こんにちは、中野満知子です。アサーティブトレーニング基礎編を担当しています。
アサーティブネスとは、相手を尊重しつつ、自分の気持ちにも正直に表現する考え方と、
方法のことを言います。
これがけっこう難しいのです。
この間も、こんなことがありました。
Y駅から講演先の会場までタクシーに乗った時のことです。
「Yセンターまで行ってください」というと、
「どっちの?」と運転手さん。
「えっ?」
「だからあ、ここはちょうど市をまたいでるから、どっちの市のセンターかはっきりしてくれないと!」
そう言われても……、困った私はY市の職員研修があるのだと告げました。
「じゃあこっちだね」
車はやっとスタートいたしました。
道中、もし会場が違っていて、行きつかなかったらどうしようと、なかなか動悸がおさまらない私。
「同じ名前があると知っていたら、住所まで調べてきたのに、ちゃんと行き先をお伝えするのも難しいものですね」と声をかけました。
その様子を察してか、
「いやあお客さん、ちょうどお客さんの前の方も同じ場所を言われたんだけどねえ、隣の市の方だったんですよ。そのお客さん私が間違ったって、すごい剣幕で怒ってねえ」
なあんだそうだったのか。訳が分かった私は、
「それはいやな思いをしましたね」と一言。
それだけなのに、その後の運転手さんはとっても親切にいろいろ道路案内をしてくれ、メーターを切ったあとも、あっちの玄関の方が近いなと、ぐるりと回って入口真正面まで付けてくれたのでした。
「お忘れ物がないように、お気をつけて行ってらっしゃい」とまで言ってくれて、最初の不安と憤りがいつの間にか消えていました。
「ここにあるものを片づけて」
「帰ってすぐに、次々用事を言わないで」
「それは、いらない」
私たちは要求や判断のみをぶっきらぼうに言いがちですが、「なぜ」の一言が加わると、ずいぶん関係が変わってきます。
「ここにあるもの片づけておいてくれると、次の人が使いやすいと思うのよね。気持よく引き継ぎがしたいから、片づけてくれるかな~」
「職場でめいっぱい気を使って帰ってくるので、ほっと一息つく時間が必要なんだ。気持ち切り替えるまで待ってくれると~」
「それは自分には高価すぎてもったいない気がする、もっと気易く使える物の方が自分にはあってると思うから~」
いかがでしょう? 動機となる一言、気持ちの言葉が入るとこんなに相手への伝わり方が変わります。何でも言えてますっておっしゃるあなた、理由となる一言、添えてらっしゃいますか?
アサーティブトレーニングではグループワークの中で、自分の話し方の癖を客観的に知ることができます。きっと身近な人とのよりよい関係への一歩となることでしょう。
次回の基礎編は10月31日・11月1日、研修室にてお待ちしています。